2017年11月1日水曜日

中国政府を糾弾、「亡命」富豪の強気の戦い



 1.5億ドルの「軍資金」を用意、中国共産党にさらなる批判

    中国共産党の一部指導者による汚職や不正について、「亡命先」のニューヨークから批判を繰り返してきた実業家の郭文貴氏。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に対し、今後も中国共産党に対する発言を引き続き積極的に展開すべく、軍資金を準備してあると述べた。自身の信用を失墜させようとする中国政府の企てにも対抗するとしている。

 郭氏は名誉毀損(きそん)などを巡る複数の訴訟で争うほか、中国政府にさらなる批判を浴びせることで、今後数年間に発生するだろう法的費用などの出費に備え、15000万ドル(約170億円)以上を確保してあると述べた。同氏は先月、米国に政治亡命を正式に申請している。

 「何も私を止められない」。郭氏はマンハッタンのセントラルパークを見下ろす高級アパートで行われたインタビューでこう述べた。同氏は米政府が亡命を認め、自分を「黙らせる」中国政府の動きに立ちはだかることを確信していると語った。

 NY在住の郭文貴氏は中国企業と政界上層部との癒着疑惑を次々暴露してきた

            「米国は、正義の最後のとりでだ」と郭氏は述べた。「もし米国が存在しなかったら、私はこの世にいないだろう」
マイルス・クオックと名乗ることもある郭氏は、中国の不動産王として一代で財を成し、2015年から米国に住んでいる。自身と親しかった国家安全省の当局者が中国政府の汚職撲滅運動の一環で拘束されることを知り、中国から脱出したという。

 郭氏は過去9カ月間にツイートやオンライン動画、ソーシャルメディアへの投稿を通じ、中国企業と政界上層部の癒着が疑われる状況を次々と暴露。政治に関心がある一部の中国国民から注目を集めるとともに、中国政府に揺さぶりをかけてきた。また、中国の政治家の資産や海外不動産の所有状況について詳細な資料を公表する考えも示している。同氏はこれらの情報を国家安全省との過去の仕事を通じて、また私立探偵を雇うなどして入手したとしている。

 郭氏はここ数週間、攻勢を強めている。ワシントン・タイムズに最近寄稿したオピニオン記事は「巨大な中国マフィア国家」を批判する内容だった。4日には米シンクタンク、ハドソン研究所で講演を行う計画だ。同氏によると、中国の政治的野望と、中国の対米投資が米国の国家安全保障に及ぼす影響について語るという。「中国はいま非常に危険な岐路に差しかかっている」と郭氏は話す。

 中国政府は郭氏の暴露話を荒唐無稽とはねつけ、国際刑事警察機構を通じて指名手配した。中国の裁判所は郭氏のかつての部下の一部に対し、詐欺や横領などの罪で禁錮や罰金の刑を科した。中国メディアは同氏を悪質な人物として描いた記事を掲載している。

 郭氏の語る疑惑は、独立した検証が難しいものが多い。同氏の年齢でさえ少々議論の余地がある。同氏はWSJに対し、生年は1967年か1968年だと思うと語ったが、以前は1970年生まれだと話していた。ただ、同氏の主張の数々は、今月開催される5年に1度の共産党大会で慎重に演出される最高指導部入れ替えに影響を及ぼすかもしれない。

 党大会では向こう5年間のトップに習近平国家主席が選出される予定だ。地位の高い一部の幹部を郭氏が攻撃したことで、主要ポストへの昇進を狙う高級幹部の水面下の争いを左右する可能性がある。

 中国当局者は8月、郭氏を贈収賄や誘拐、詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)、性的暴行など少なくとも19の重大犯罪の容疑で捜査しているとAP通信に述べた。また中国の複数の企業や個人が最近、米国の裁判所で郭氏に対する訴訟を起こした。係争中のものでは、企業買収を手がける複合企業、海航集団(HNAグループ)から名誉毀損で訴えられたケースがある。郭氏はHNAと共産党高級幹部の癒着を指摘していた。中国人女性がニューヨークで起こした別の民事訴訟は、郭氏の個人アシスタントとして働いていたときに性的暴行を受けたというものだ。

 郭氏はこれらの容疑を否認し、中国当局が仕掛けた偽情報キャンペーンの一環だと主張した。

 「これは私が何者か、私が何をしたかとは一切関係がない。私がこれまで暴露した内容に対し、彼らは公の場で何一つ反論していない」

 郭氏は中国政府についてこう述べた。居住するアパートの暖炉のそばで中国の黒いガウンに身を包み、お茶をすすりながら、郭氏は自分が不正行為をしているという証拠を示すべきだと主張した。

 郭氏の支持者らは、中国の市民に直接メッセージを届ける同氏の動きを中国政府が妨げようとしていると話す。中国では最近、米 フェイスブック 傘下のメッセージアプリ「ワッツアップ」で数回の障害が起きたが、それは郭氏のライブ動画や米国に拠点を置く中国メディアとのインタビューを配信するのと同じタイミングだった。中国のネット空間を管理する国家互聯網信息弁公室(CAC)は「全ての企業は違法な情報をブロックする責任があり、ワッツアップも同じだ」と述べた。
先週末、郭氏が使っていたフェイスブックのアカウントが削除された。事情に詳しい関係者によると、個人識別情報を共有するのに使われたため、フェイスブックがこのアカウントの使用を停止したという。こうしたデータを無断で公開するのはサービス利用規約に違反している。

 この件を質問された郭氏は、敵の仕業であるとの考えを示した。同氏はツイッターへの投稿でこの行為を「卑劣だ」と断じた。

By Cezary Podkul and Chun Han
2017 10 4 15:20 JST ウォール・ストリート・ジャーナル

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